不動産投資家の心を奪う積算評価
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不動産を買いたい。
このブログの読者さんであれば全員がそう思っているはずです。良い物件であればもちろん買っていくべきですが、そうでなくても欲しくなってしまうことがあります。
代表的なものが「デカくて、融資がつく」ものでしょうか。
◆もちろん融資は大事
ぼくはかねてより「融資が先、物件が後」と強く強調しています。
これは、主に不動産の初心者の方が買えもしないタイプの物件を、必死になって探していることに注意を促す意味合いがあります。
代表的なのが、都心部で利回りが高くない一棟ものと、地方にある古い木造・軽量鉄骨アパートです。入居付けへの恐れとか、ライバルの多い高積算RCを毛嫌いしている人に好かれる物件種別です。
買えない物件を一生懸命探して、リサーチもして現地にも行って、指値も通していざ銀行にいったら一発アウト。周りも巻き込んでこんな非効率な活動をしていては、いつまで経っても買えません。
しかし、もちろん「融資がつけば何でも買ってよい」訳ではありません。融資がつくものの中から、良いものを選ぶのです。
◆積算オーバーだけが売りの物件
こちらのツイートをご覧下さい。ぼくもたまに陥る心理状態です。
「積算超過でフルローン可能性。しかも2億!」でも利回り低めで古い。。
「価格があと3千万下がれば!」
「入居者入れ替わりで家賃を上げていければ!」
「出口はまた市況が回復して、築古でも30年融資がつくようになれば!」おいおい、積算以外全部ダメじゃん!一度冷静になって考えましょう。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) June 13, 2020
たまにある積算「だけ」が出ている物件ですね。
積算はもちろん、融資がつくかどうかの(特にサラリーマン属性の)重要な指標ですので、物件紹介メールに「積算オーバー、フルローン可能性あり!」なんて書かれていれば心が動きます。高額であると、さらにテンションが上がります。
積算は、土地の相続税路線価と、建築年によって減価させた建物価値を合計したものですが、必ずしも収益性や物件の価値とは連動していません。
慎重に検討しなければならない「高積算物件」とは、どのようなタイプのものがあるでしょうか。
◆路線価=土地値ではない
まず、積算が出やすい物件は一般的に地方にあります。これは、相続税路線価と実際の土地相場の乖離が、都会ほど大きくなる傾向があることが原因です。
地方の場合は、路線価と同じかそれ以下で売られている土地がたくさんありますが、都心部にいくと2倍以上の乖離があることも珍しくありません。
全国同じ計算式で算出される積算評価で、都会の物件の相場と乖離ができるのは当然ですよね。
もちろん、価値があるのは都会の物件ですから、価値が低い地方の物件ほど良く見えてしまうという積算評価の弱点のひとつとなっています。
◆利回りが高いとも限らない
積算以下!という記載があると割安感があって利回りも高そうですが、こちらもそうとは限りません。積算が出るけど利回りは低いという物件は、別に珍しくありません。
一例として、地方の物件は都会の物件に比べて、戸あたりの間取りを広く作る傾向があります。土地に余裕があるのと、入居者が求める部屋の広さの違いによるものです。
部屋の面積は、建物の積算評価に正比例します。しかし、家賃が部屋の面積に比例する訳ではありません。
賃貸住宅に限らず、広く作るほど単位面積あたりの売上は低くなり、結果利回りが下がります。スペースを貸している業態は全てそうです。だからカプセルサウナやマンガ喫茶の単位面積売上はかなり高いです。
また、地方の物件は駐車場スペースを確保しなければ入居が付かないので、建蔽率にも余裕があることが多いです。
土地の広さも、そのまま積算評価につながりますが、駐車場として土地が稼ぐ金額は単位面積に換算すると非常に低く、これも利回りを押し下げる原因となります。
◆高積算&高利回りの物件の弱点
かといって、地方にある「お部屋狭め、駐車場なし」の高積算物件は、今度は入居の競争力が著しく低くなってしまい、賃貸経営に苦労を強いられるという宿命にあります。
今の不動産投資相場でも、積算以下の金額で売りに出せば大抵売れてしまうので、上記ツイートのような物件に大幅な指値をして購入するのは難しいと思います。
積算だけ出ている物件というのは意外と多く、むしろ普通の物件が何らかの理由(空室が多いなど)で安く売られた結果、たまたま積算を下回る価格となった・・くらいの方が購入に値する物件は多いような気がします。
積算だけに心を奪われるようなことがないよう、お互い気をつけましょう。