理不尽に流された取引(Wikipediaも間違っている)
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区分マンションを多く買っていますが、他の一棟もの物件に比べると「両手取引」の割合が高いです。
両手取引とは、ひとつの仲介会社が売主と買主の両方から媒介契約を結ぶことを言います。売買成立の際には双方から仲介手数料を得られるので、不動産会社はできるだけ両手仲介を狙います。
区分マンションなど比較的少額の物件はその分手数料も低いので、レインズなどをチェックして片手(買主側)に入り込もうとする不動産会社が少ないのかもしれません。
両手取引は、売主と仲介会社が直で話をしているので「話が早く進む」というメリットがあるものの、ひとつの会社が双方の代理に近い行為をするので、問題が生じる場合こともあります。
◆売主に不利と言われているけど・・・
例えば、何かの民事裁判があったときに、原告と被告に同じ弁護士がついていたらフェアな裁判ができませんよね。なので、不動産の両手取引が無条件に認められている国は意外と少ないようです。
ウィキペディアで「両手取引」についての解説を読んでみると、「値下げの圧力が掛かる」「適切に情報開示がされない(=囲い込み行為)」ために売主にデメリットがあるように書かれていますが・・・
※Wikipediaより。画像クリックで全文読めます。
ぼくの経験上、これは完全に逆です。
売却中の不動産があるとして、その不動産や売主は唯一のもので代わりがいません。しかし、買い手は探せばたくさんいる訳です。元付となり専任媒介契約さえキープしていれば、どこかのタイミングで必ず仲介手数料が入る。
買主よりも売主を優先するのは当然というものです。
ぼくも物件を売るときはありますし、両手仲介の会社が「どちらかというと売主寄り」であることは全然構いません。そのつもりで、やりとりしています。
しかし、その度合いが極端すぎるケースも意外と多く、そのとき買い手はいいように振り回されてしまうことになります。
◆売主に異常な気を遣う仲介会社の話
先月の話です。買付を出した区分マンションの仲介会社について「売主にかなり気を遣っているようだ」と社員さんから報告を受けていました。
※社員さんの日報より。
このくらいなら全然よくある話です。報告を受けても「そうなんだー」という感じで特に気にせず、やりとりを進めてもらいました。
こんな感じででしょうか・・・。
しかし、その後「ちょっと極端だな」と思えるような売主の主張と、それに自動的に従ってしまう仲介会社の姿勢に違和感を覚えるようになります。具体的には、こんなことがありました。
・事前にネガティブ情報を積極的に伝えてくる
・買付承諾後にキャンセルしないための念押しがものすごい
・火災報知器について「売主の気分を害すから」と確認しようともしない
・手付支払いを振込限定にし、しかも振込手数料をこちらで持てという
・買主が売買契約書に捺印して手付金を払ってから、売主が捺印するという
上記すべてについて「それはおかしいでしょ」と説き伏せて、都度なんとか正しい方向に戻していきましたが、普段の取引に比べて疲弊度がすごいです。
昨日も購入予定マンションの火災報知器でもめました。
仲介「そんなこと売主に言えない!」「売買がダメになる!」「報知器代を払えばいいのか?」「そんな面倒なことを言う買主は初めてだ!」
とか散々言われましたが、結局ちゃんと付いてました。法律で決まっていることもやろうとしないなんてね。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) June 23, 2020
報知器の件ではツイートもしています。売主への過剰な配慮が見て取れますね。
◆売主の捺印後に・・・
数々の売主偏重取引をくつがえしつつ、売主の契約書捺印を終え(もちろん、手付けを支払う前に売主の捺印をもらうことにしました)、明日はいよいよこちらの契約だという日に最後のトラブルが起きました。
「預かっている敷金は買主には渡したくない」
と売主が言い出したというのです。
既に売主は売買契約書に捺印しています。特約条項には下記の通り、敷金は引き継ぐ旨がバッチリ記載されています。
しかし、あろうことか仲介がこちらに言ってきたのは「・・ということなので、引き継がない形でお願いしたいのですが」でした。耳を疑うレベルですね・・笑
敷金の額は10万円程度と決して高いものではありませんし、借主に返却しなくても良いということで、こちらの損失は極めて少ないものです。
しかし、ぼくとしては「契約書で決めたことは履行する」という当たり前の約束は守るべきだと思うし、仮に自社が儲かる取引がここでポシャることになっても、自分の原理原則を守り通すことは大切だと思いました。
◆お詫びをする相手が違う
なので、社員さんを通じて「そういう条件は飲めません」という連絡をしました。「なんだったら仲介手数料で調整されたらどうですか?」とも言いました。
その後、仲介から届いたメールがこちらです。
「受け取り方によって解釈ができる」というのは、ひとつの文章が2つ以上の意味に取れるということだと思いますが、あの条文を「敷金を引き継ぐ」以外の意味に受け取っているとすれば、国語力に難があると言わざるを得ません。
それと、最後の赤囲み「売主様へ謝罪をさせていただきます」の一文が、今回の取引が歪んでいたことを証明していますよね。売主のための取引だったという訳です。(細かいことですが、上記の文章は意図的にこちらへの謝罪の言葉を排除しているように見えます)
取引の流れを振り返って見ると、途中で降りてしまうという選択肢もあったのかなぁと思います。やりとりをしていた社員さんの精神的なダメージを減らせたでしょうし。
まあでも、不動産というのは「ダメになるまでは全力で取りに行く」という姿勢でないと買えません。こういうことは今後も出てくると思いますので、慣れる・・・というか、少しでも上手い対応ができるように工夫していくしかありませんね。
両手仲介は売主の味方です。公平さを期待するのはやめましょう。