滞納家賃を回収するために、知っておくべき大前提
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これまで他の記事で書いているように、滞納保証会社は名前こそ「保証会社」ですが、実際には「保証料を集めて滞納家賃を肩代わりする」のではなく「大家に代わって滞納家賃を取り立てる」という業務がメインになっています。
滞納保証という仕組みを知った当初は「保証料って、意外と安いな」と思ったものですが、それもそのはず。代位弁済した家賃のほとんどをキッチリ回収しているのですから、保証料は会社運営の経費としてたっぷり使えます。
生命保険や損害保険は、集めた保険料の5~7割を保険金として支払っていますから、その違いは大きいですよね。
◆武器になる「回収スキル」
しかし、それでも滞納保証会社のニーズが高いのは、大家さんが自分で滞納家賃を回収することが難しく、そして面倒くさいからです。
逆にいえば、大家さん自身が強力な「家賃回収力」を身につければ、それは空室を埋めたり安くバリューアップさせるスキルと同じく、不動産投資における大きな武器となる訳です。
国土交通省の資料によると、保証会社を利用している入居者の割合は56%程度ということで、意外と高くありません。
滞納に困って賃貸経営に嫌気がさしているような人から物件を安く買い、問題入居者をキッチリ排除または滞納家賃を回収した上で優良な人を入れ、物件の価値を上げていくことができれば、回収スキルを利益に直結させられます。
◆滞納対策、性善説はムリ。
滞納についての基本的な考え方は、以前の記事で説明しました。
滞納者について特段の感情を持たず、淡々と処理するのが基本ということですが、そうはいってもネガティブな気持ちを持つ大家さんは多いもの。
・入居者に嫌がられてしまうので、催促しづらい。
・相手もお金に困っているだろうから、どうしても強く言えない。
・恨まれたり、何か仕返しをされてるかもと思うと怖い。
・これまで、たくさんの家賃を頂いているので、つい遠慮してしまう。
こんな考えが、強い督促を躊躇させます。
ぼくだって、普通に「かわいそうだな」とか「嫌われるのイヤだな」という感情はありますので、上記のような考え方が分からないでもありません。
しかし、長年に渡って滞納する人と関わってきた結果、大家さんが思っているほど入居者は困っていないし誠実でもないし、良好な信頼関係が築けている訳でもないということが分かりました。
その証拠として、こちらのツイートをご覧下さい。
「払わないと明渡訴訟するぞ」という内容証明を送ってた滞納者さんが、Facebookにトリュフ茶漬の写真載せてるの見つけた時に、これからは慈悲を捨てようと決意しました。 pic.twitter.com/xxCmvvkYnR
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) December 27, 2018
※初めて500いいねを超えたツイートでした(笑)
高級食材トリュフをふんだんに使ったお茶漬けがいくらするのか知りませんが、滞納者の実態なんかこんなものなのです。家賃を払うお金はちゃんとある。
大家さんは性善説の立場から「入居者さんも事情があるだろうし・・」とか「相手を信頼しないと、向こうからも信頼していただけない」なんて思っていても、残念ながらその心は相手には届いていません。
そして、非常に大切なことは「家賃を払いたい入居者などいない」ということです。
お気に入りの飲食店にいくときなど、応援の気持ちで「お金を使ってあげたい」と感じることもありますが、家賃を払う際に大家さんのことを応援している入居者などいません。
大家さんが行うべきことは、入居者さんに愛情や思いやりをかけることではなく、快適で安全な住居を提供することです。その対価として家賃をいただいているのですから、支払いがなされないときはキッチリと全力で回収すべきなのです。
◆全ての人が、家賃を「仕方なく」払っている
家賃を喜んで払うような人がほぼいない以上、「督促されてイヤだな」という感情、または「このまま払わないと追い出される」という強迫観念がないと、家賃は払ってもらえません。
だから、自分の会社では滞納者に対してはかなり強く督促するようなルールになっています。
家賃滞納について絶対に心得ておくべきことは「家賃を払いたい人などいない」ということです。北風と太陽の話がありますが、滞納の督促は1000%北風で対応。
発覚したらすぐ電話、繋がるまで電話、保証人にも職場にも。職場の人にも「◯◯さんが滞納してるので」って伝えます。嫌なことしないとダメ。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) June 2, 2020
今は仕組み的に難しいのでやっていませんが、自分で家賃の管理をしていた時は、月末最終営業日の午後3時を過ぎたらすぐに電話をしていました。
ちょっとの差で当日着金が間に合わなかったような人にも電話をすることになりますが、当然相手は「この大家さん、厳しい・・」と思う訳です。
それで来月の家賃がどうなるかというと、「先月は入れ違いなのに電話してきてムカついたから、今月はさらに1日遅らせてやれ」とひねくれるのではなく、ちゃんと3時までに着金するように支払ってくれるのです。
童話とは異なり、100%北風が勝ちます。「お困りですよねぇ、あるときにお支払いいただければ大丈夫ですよ」と太陽の真似をすると、入居者さんは「ラッキー!」と喜び、家賃は払われません。
繰り返しになりますが、家賃は嫌々ながら払うものです。入居者が「家賃を払うよりも嫌な気分」にならない限り、滞納グセのある人が改善することはありません。
しかし・・・。
大家をやっているぼくでも、自分が借りている部屋の家賃を感謝の気持ちとともに喜んで支払うようなことはありません。他の入居者さんと同じく、仕方なく払っているのです。
この部分は永久に改善しない大家さんの「業」のようなものなのでしょうね。感謝されるような存在でありたいものですが。