大家さんの損害賠償責任
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地味すぎてセミナー集客ができないようなテーマを、あえてブログ記事にしていく企画も今回でひとまず完結できそうです。
◆地味すぎてお客が集まりそうもない不動産投資のセミナー5選
1「減価償却のすべて」
2「腐食と錆の予防講座」
3「火災保険約款の完全理解」
4「30代からの相続対策」
5「賃貸経営と損害賠償」自分への試練として、これを全部ブログ記事として解説していきます(なるべく楽しく面白く)
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) October 25, 2020
これまでのテーマのうち、減価償却と相続については予想以上のアクセスがありました。
錆と保険約款の人気がなかったですね・・・書くのが大変だったのはむしろこの2つなんですけど、仕方ありません。
◆そもそも「損害賠償」とは
最後のテーマは、賃貸経営と損害賠償についてです。
そもそも損害賠償という概念は、民法の709条で規定されています。条文を掲載してみましょう。
第709条【不法行為による損害賠償】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
別に難しいことはありませんね。
わざと、またはミスによって他人に迷惑を掛けた場合は、ちゃんと弁償しましょうということです。
謝って済むことではありません。ちゃんと金銭的な償いをしなければならない・・というのが日本のルールです。
逆に「謝らないといけない」というルールはありません。だからクレーマーの方々が主張する「誠意を見せろ」というのは、「お金を出せ」ということで法律的にも辻褄が合っているということになります。
「ゼニカネの問題じゃないんだ!」とも言われますが、200%ゼニカネの問題です。
◆故意でも過失でもない「不可抗力」
民法上で損害賠償責任が生じるのは、加害者の「故意」か「過失」が合った場合です。なので、故意も過失もない場合は損害賠償責任は生じないということになります。
ここはかなり重要な概念ですね。
故意も過失もないけど、相手に何かしらの損害を与えてしまうことはあり得ます。これに該当する主なものは「不可抗力」です。
人の力ではどうにもならないこと全般を不可抗力といい、法律的には「通常要求される注意や予防を行っても防げなかった損害」という意味で使います。主なものは自然災害です。
なので、仮に自然災害によって破損したアパートが原因で、入居者や通行人がケガをしたり死亡された場合でも、基本的には大家さんの賠償責任は生じません。
ここで「あれ?でも賠償させられて破産した大家さんのニュースを見たことがあるな、、」と思った方もいるでしょう。
おそらくはこの裁判のことかと思われます。
地震という自然災害、しかも当時は予測もされていなかった規模の大きな地震であっても家主の賠償責任が裁判で認められた訳ですが、これには続きがあります。
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ということで、この建物は通常求められる安全性を有していないまま放置されており、周りの建物は全然壊れたないのにこの建物だけが倒壊したという理由で、所有者の過失が認められました。
賃貸住宅が損壊して命を落とした方はほかにもたくさんいる中で、この事件だけが巨額の賠償責任を負ったのは「不可抗力が認められなかった」からなのです。
◆大家さんの損害賠償責任保険について
大家さんが通常、火災保険と併せて加入している賠償責任保険は「施設所有(管理)者賠償責任保険」というものです。火災保険の特約になってることも多いですが、単体で加入することもできます。
この保険は文字通り「施設の所有や管理によって賠償責任を負った場合」に、その賠償金を保険で肩代わりするものです。
適用事例で多いのは、共有部からの漏水事故でしょうか。濡れてしまった家具や電化製品の修理交換費用を肩代わりします。
さてこの保険。「損害賠償の肩代わり」ですから、天災などの不可抗力が原因で損害を与えてしまった場合は民法上の賠償責任はなく、従って保険金支払いの対象にもなりません。
逆にいえば、民法上の責任がある場合は保険も出る、ということになります。
ただし、民法上の損害賠償責任が発生する場合でも賠償責任保険では免責(対象外)になるケースもあります。
それは被保険者の「故意」と「重過失」が原因の場合。
故意については解釈が分かれる余地はありませんが、重過失というのは分野ごとに明確な定義がある訳ではありません。
保険会社に在籍していた頃は、重過失の定義を
・損害が生じるのが分かっていながら放置した
・(法律違反ではないが)常識では考えられないことをした
のふたつと教えられました。
先ほど例に挙げた震災による損害賠償は、保険約款で天災による被害が免責になっていなかったとしても、重過失免責の規定で保険金支払対象にはならなかったと思われます。
ということで、大家さんは法律や条例に違反せず、相応の建物管理と安全義務を履行していれば、仮に損害賠償責任を負ったとしても保険で対処できるはずです。
過度は心配は不要というのが結論ですね。
※法律に詳しい人のための補足:民法には第709条の不法行為による損害賠償のほか、第717条で「土地の工作物責任」について規定しています。この条文は工作物の所有者に無過失責任を負うことになっていますが、それであっても例えば「絶対に地震で倒れない家屋」「どんな台風でも飛ばない瓦屋根」などは存在しない訳で、多くの判例も特段の瑕疵がない限りは土地の工作物を原因とする損害であっても不可抗力を認めています。