売るか、持つかの判断基準
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不動産を売却するか、そのまま持ち続けるかの選択はキャリアを積んでもそれなりに迷うものです。
逆に言えばこの状態は「売ったら利益を出せるのは間違いないけど、このまま保有していてもキャッシュフローに不安はない」ということで、自身の投資が上手くいっていると考えられます。
空室や修繕費が増えて「これ以上持っていられない」という状態になったり、「今売ったら大損だ」ということなら、売るか持つかを迷ったりできませんからね。
◆基準は「10年分」
そこで今日は、ぼくが10年以上前にメンターから教えてもらった基準についてご紹介します。とてもシンプルですが、奥が深いと思います。
こちらのツイートをご覧下さい。
◆持ち物件を売るかどうかの判断基準
これはもちろん、様々な考え方がありますが、ぼくがメンターに教えられて指針にしているのは、
「キャッシュフロー10年分が一度に入るかどうか」
10年間の賃料推移、経費、税金なども考慮しなければいけないので、計算は少し複雑です。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) December 14, 2020
売却を決断する指標として「キャッシュフロー10年分が一度に得られるかどうか」を考えます。
今後10年間で得られるキャッシュフローを一度に手にできるのであれば、いったん現金に戻した上で、より大きかったり新しかったり場所が良かったりする別の不動産を買い直した方がトータルの利益が大きくなる、、という判断基準です。
1億円のマンションから得られるキャッシュフローが年間250万円だとして、今このマンションを売却したら同じ1億円の予想。
こういう状態で、このマンションの残債が7千万円だとすれば、売却時に得られる金額は3千万円=キャッシュフローの14年分だから売却方向で考えます。
◆キャッシュフローの予測は慎重に
上記の計算はかなり単純化しているので、補足説明をします。
まず「10年分のキャッシュフロー」というのは、今のキャッシュフロー10年分ではなく「今後10年の見通し」で考えます。
これから入居率が悪化したり修繕費用が増えていくと思うのであれば、今後10年のキャッシュフローは今年の6~7倍くらいかもしれません。
また、キャッシュフローの予想も売却時の手残りも、どちらも「税引き後」で考える必要があります。
個人での売却の場合は、保有後5年(正確には1月1日を何回超えたか)で売却益にかかる税率が異なりますし、通常の賃料収入も課税されます。
賃料収入には4割の所得税がかかるのに、売却益には2割しか課税されないというような人もいますが、そういう人は売った時のメリットがより大きくなります。
◆意外と多い「売った方が良い」ケース
売却時に得られる現金がキャッシュフロー何年分かを計算する際、購入時に拠出した現金は差し引いて考えなければなりません。そしてもちろん、売却時の仲介手数料なども勘案します。
自分の持ち物件などで資産してみると分かるのですが、売却時の手残りがキャッシュフロー10年分を超えるケースは意外と多くあります。
なかには「あれ、20年分以上いけるんじゃない?」ということもあります。
しかし、実際の心境としては「この物件は安く買えたから売却益が出るけど、これを売ったとしても次に良いものが買えるかどうか分からない」ということで、素直に売る選択ができないことが多いです。
もちろん、そう思って保有を続けるのもありでしょう。経営が安定している証拠でもありますし、喜ばしいことです。
ただし、このシミュレーションで考慮しなければならないのは「売却して得られるキャッシュはほぼ確定だけど、10年間のCFと将来の売却益は不確定」だということです。
◆それでも保有するという選択
この考え方で、自分は割と多くの物件を売ってきました。
購入した一棟ものの半分以上を売却していますし、10年以上保有したものはひとつだけです。
でも、自分の現在の持ち物件では多くの一棟ものが「いま売れば10年分以上のキャッシュが入る」という状態です。
それでも売らずに保有をしているのは
・会社の決算書上で、保有のほうがまだメリットがある
・融資情勢の関係で将来のほうが高く売れるかもしれない
・残債の減少ペース早く、1~2年後の方が売却メリットが増える
・完済が見えているものがあり、完済後はCFが激増する
というような理由が、それぞれの持ち物件にあるからです。
とはいえ「いま売ったらいくら入るか」という予想をしながら、持ち物件の将来像や今後の投資戦略を描いていくことは、売るかどうかに関わらずプラスになる活動なので、定期的にチェックしていくことをお薦めします。
年末は、こういうことを考える時期としては良いですね。