借地借家法のイマイチなところ

2020年10月29日

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今日はちょっと取っ付きにくいかもしれない法律の話。

大家さんが関係する法律として、民法と並んで大切な借地借家法についてお話してみたいと思います。

 

◆「貸し借りの法律」の歴史

借地借家法は「借主の権利が強すぎる古い時代の法律だ」というイメージが強いかもしれませんが、この法律の制定は平成3年(1991年)と、大きな法律としては比較的新しいものです。

それまで大家と店子の権利関係を定めていたのは、借地法と借家法(ともに大正10年制定)、そして建物の保護ニ関スル法律(明治42年制定)の3つの法律で、これらは借地借家法の制定によって廃止されています。

 

 

まあ、いずれにしてもこれらの法律は立法趣旨(法律を作った目的)が、そもそも「立場の弱い借主(借地人、借家人、店子)の保護」にあります

だから、貸す側である大家さんから見れば不合理に見えるのも仕方ありません。

借地法や借家法ができる前は、地主さんや大家さんは割と好き勝手に契約の更新を拒絶したり家賃や借地料の改定ができたりと、やりたい放題だったのでしょうね。

 

◆借地権・借家権=半永久的に借りる権利

ちなみに借地法で定められている「借地権」というのは、単に土地を借りる権利ではなく、建物の所有を目的とする土地の賃借権です。

だから、単に更地を借りていることは借地権ではなく、だから借り上げの駐車場を解約されて困ったりする訳ですね。

※関連記事:地方の駐車場、軽んずべからず

 

借地法・借家法の根幹となるルールは、「貸主は借主が契約更新の意思を示している場合、基本的にこれを拒むことができない」というものです

特段の事情がなく借主が賃料を払っている限り、半永久的に借り続けられる訳です。

確かに、ポンポンと追い出されてしまっては困りますが、借地法・借家法が成立してから日本の経済はどんどん成長し、地価も家賃も上がっていきました。

良い土地を持っている人からしたら「古い家を建て替えたら、もっと高い家賃を取れる」と考えるのが自然ですし、「所有者の違ういくつかの土地を合筆して、大きなビルを建築しよう」というような会社も出てくるでしょう。

 

そういったニーズを、借地法・借家法は拒んできた歴史があります。

だから、大家さんが借地借家法について悪く言う場合、ほとんどが借地法・借家法(旧法)の時代からあるルールについて言及しています

 

◆どっちが「普通」?

平成になって作られた借地借家法は、定期借地権・定期借家権といった、更新を前提としていない形で土地や家を貸すことができるように改正されました。

しかし、同時に「旧法での契約は、双方の合意がないと定期借地・定期借家の契約に移行できない」というルールも定められました。

しかも期間の定めのある契約を「定期(借地・借家)契約」と呼ぶのに対し、旧法から続くような借主からの更新を拒めない契約を「普通(借地・借家)契約」と呼ぶようになったのです。

 

これは、なかなか酷いネーミングです。

例えばどこかのホテルに宿泊するような人がいるとしましょう。


フロント「今回は3泊のご予定ですか?」
お客さん「そうやけど、その後も続けて泊まりたくなったら最終日に言いますわ」
フロント「いや、、その翌日は別のご予約が・・・」
お客さん「知らんがな。あ、ちなみに1泊で帰るかもしれんで」


こういう気まぐれが許される宿泊方式を「普通宿泊契約」と呼んでいるようなものです。

 

普通の契約だと思われる「定期」借家契約は、そのネーミングもさることながら、契約時には不安を煽るような念入りな説明をしなければならないこともあり、都市部を除いてはあまり普及していません。

なので大家さんは、令和の世になっても相変わらず悪質な入居者を追い出すことに苦労していますし、再開発に伴う立ち退き要求は「ゴネ得」がしっかり通用してしまうのです。

 

◆おまけ

ぼくの大好きな映画「マルサの女」では、立ち退きを迫るチンピラがごねるラーメン店主にキレながら、華麗に借地借家法のことを説明してくれるシーンがあります。

めちゃくちゃ面白いですよね。

分かりやすい説明(家賃333年分)、長いセリフを飽きさせないようにくるくる回る動き。揺れる電灯。伊丹十三監督って、ほんとすごいです。

 

ちなみにここで、地主さんには2億、借主(ラーメン屋さん)には8億・・という説明が出てきますが、これは借地権割合のことを言ってます。

土地にはそれぞれ借地権割合が定められていて、立ち退き料もそれに応じて分配するので、ただ土地を借りていただけのラーメン屋さんが莫大な儲けを手にしてしまうという不条理を説明しているのです。

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