なぜ個人事業主は融資に不利なのか?
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お酒を飲んで酔っ払う感覚と並んで、実際にやってみないとつかめない感覚が「法人化」です。
普通の人はビールを一口飲んだくらいでは「酔った」という感じがしないのと同様に、法人の規模も小さいうちは「個人との明らかな違い」を認識するのが難しいかもしれません。
だから、税理士報酬とか決算の手間が障壁になって、個人のままで停滞してしまう大家さんも多いので、今日はそちらをテーマにしてみました。
◆個人事業と法人の「利益」の違い
個人と法人の違いについてのツイートをご覧下さい。
◆個人のままでは融資をたくさん受けにくい理由
・役員報酬という概念がなく、売上を好きに使ってしまえる
・事業の永続性に欠ける
・経営上の数値管理がしづらい
・税理士や登記費用など必要な投資をしたがらない白色申告が楽っしょー(´∀`*) って言ってるユルい人を、銀行は評価しません。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) November 19, 2020
不動産を法人所有にしている場合、家賃は会社の「売上」となり各種の経費を支払った手残りが「利益」となります。
大家さん法人のほとんどは、会社の代表者がオーナー(株主)と同じですが、大家さん個人の生活費として使って良いお金は会社の中には1円もありません。役員報酬として決めた「定額の」お金が、いわゆるお給料となります。
役員報酬を払い源泉徴収などで課税されたあと、ようやく自由に使えます。
まとめると、会社のお金を社長個人で自由に使うためには
①売上 ②役員報酬として受け取る ③源泉徴収される ④自由に使える
という4ステップを経なければなりませんが、
これが個人事業主の場合
①売上 ②自由に使える
という感じで、売上そのものに手を付けることができてしまいます。
最悪、経費の支払いやローン返済、納税をすっ飛ばすことも可能です。これはお金を貸す側の銀行からすると、大変リスクがある状態だと言えます。
ある程度の規模になると、売上と個人のお金が分かれていない方が怖い・・というか強い違和感を持つようになるでしょう。
◆相続しても「別事業」
事業の永続性については説明不要でしょう。
不動産を個人所有していた人が亡くなれば、お子さんなどに物件は相続しますが、事業そのものを承継した訳ではなく、あくまで「違う人に物件が渡った」だけです。
これが法人の場合、不動産そのものではなく「法人の株式」を相続するとう形になるので、事業としては永続性が保たれています。
もちろん、その後新しいオーナーが物件を売却したり、経営が下手くそで事業が傾く可能性はあるのですが、通常はオーナーが働けなくなる前に後継者的な人が準備されているものです。
事業そのものが、突然なくなる・・というリスクは、個人とは比べものにならないくらい低いので、だから金融機関もある程度安心してお金を貸すことができるという訳です。
◆融資審査の指標が算出できない
融資をするべきかどうかの指標において「自己資本比率」と「債務償還年数」が大切だと何度もブログの中で説明しています。
個人事業主のままだと、この2つの大事な指標を測定することができません。
自己資本比率は「純資産÷総資産」という計算式ですが、個人の純資産というのは決算書のような公的な書類として出てくることはありません。
また、債務償還年数の基礎になる「利益」は個人の「所得」とは違います。
会社の利益は税金を支払った後はきちんと会社に残りますが、個人の所得は所得税を支払ったあと個人の自由(生活・遊興費)に使うことができます。
会社の資産や利益は会社の事業のためにしか使うことができませんが、個人の資産や利益は使途が自由です。この違いは非常に大きいものだと思います。
◆税理士報酬はもったいないかどうか
法人化を躊躇している人の中には、税理士さんの費用や赤字でも発生する「法人住民税の均等割」という負担を嫌っている人もいます。
確かに、法人を維持するためには年間数十万円の費用が掛かりますし、設立の際にも同じくらいの登記費用が必要でしょう。
しかし個人のままでいたい人は、逆に言えば「その費用がもったいないと思える程度の規模しか狙っていない」ということでもあります。
ぼくも最初に法人を作って税理士さんの費用が増えた時には、ちょっともったいないなぁという気持ちはありました。最初は法人保有の物件がなかったので、売上の1割近くが顧問料でした。
しかし、今は税理士さんの顧問料は売上全体の1%に満たず、払っている経費種目のベスト20にも入りません。実際、世の中にあるちゃんとした会社で「税理士報酬が負担になっている」というところは、ほとんどないでしょう。
大きなビジョンを描き、永続的な取り組みとしてやっていく気持ちがあるなら、法人化は「するか、しないか」という選択の問題ではありません。