豪雨被害で火災保険制度がピンチ

2020年7月20日

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関東地方、もしかして梅雨明けしたかな・・と思えるようになりましたが、今年は九州地方を中心に梅雨前線の停滞からの豪雨によって甚大な被害が出ました。

NHKニュースより(画像クリックで記事ページへ)

 

あまり認めたくないですが、気候は変わってきています。

地球温暖化の影響によって海の温度が上昇し、その結果雨をもたらす前線が南の方で固定されるようになったために、近年は集中豪雨が増えたのだと思います。

最近は「地球温暖化はデマだ」という説も出てきていますが、どう考えても以前よりも暑くなっていますしね・・・。デマじゃないです。

 

◆値上げだけで済まない問題

ブログで豪雨を取り上げたのは、保険制度に重大な影響が出る可能性があるからです。少し前のツイートをご覧下さい。

今年の雨によるものではありませんが、損保会社が火災保険料を値上げするというニュースが出ました。

保険というのは複雑なようで「多くの人から集めた保険料を、事故や災害に遭った少数の人に分配する」という単純な仕組みで成り立っていますので、これだけ災害が続けば値上げは当然です。

しかしツイートにあるように、ぼくは豪雨の被害が「保険制度に適さなくなる」可能性が大きくなっていることを心配しています。

 

◆「万が一」が「よくあること」になると?

あるリスクが「保険制度に適さなくなる」原因としては、以下のようなものが考えられます。


・リスクの発生確率が一定割合を超え「少数」ではなくなったとき
・全体の被害額が大きくなりすぎたとき
・保険契約者間において、リスクに著しい差が生じたとき


 

例えば、保険契約者のうちの50%が毎年罹災して保険金の請求をするようになったとしましょう。そうなると、例え被害額が少額で支払いには問題なかったとしても、事務処理だけで保険会社の負担は増大します。

火災保険のように大量の契約を保有する商品は、制度として立ちゆかなくなるので、保険会社が保険の販売を中止するようになります。

また上記ニュースの延長で、これから先もどんどん保険料が上がっていったとしましょう。大家さんとしては、その物件から受け取れる家賃の一定割合を超えたところで、保険に加入するのを断念するようになります。

 

火災リスクのみ補償の商品を選び、豪雨で被害が出そうな場所の物件を買わないようにすることで「自助努力」の方向に向かう訳です。

そうすると、今後そういった場所の不動産は(買う人が減るので)価値がどんどん下がることになります。

 

◆安全な地域の人が「割を食う」

最後に「契約者間でのリスクの著しい差」について。

ほとんどの保険商品でリスクに応じた保険料設定が試みられていますが、それは「完璧に公平」ではなくて、どうしても「リスクの低い集団」が「リスクの高い集団」を助けてあげているような保険料設定にせざるを得ません。

 

例えば、18歳の免許取り立ての人が自動車保険に加入すると、40歳の15年無事故ドライバーの4倍以上の保険料になりますが、それでも損害率は18歳集団の方が高くなります。

事故の少ないベテランドライバー集団の保険料が、若年ドライバーの支払いに回されているということになります。

 

この状態が極端になってくると、雨の被害がほとんどない地域の高台に住んでいる人の保険料がどんどん割高になってきて、そのうち「高台に住んでいる人専用の火災保険」みたいな商品が開発されるようになります。

危険なエリアの保険料率を極端に高くする(それでも実態に応じた保険料なのですが)ことで加入を抑制し、損害率を低減させることで安全なエリアの保険料を上げずに済ますのです。

 

このように、保険の面から考えても災害の多い地域に不動産を持つリスクは今後ますます増えていくと思われます。

日本という国は、国土の均衡した発展を前提としていろんな制度ができていますが、人口も減っていく中でそこも見直していくことになりそうです。

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