話題のテック「RoomPa」について
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何やら、新しい不動産テックを見つけてしまいました。
今日はこちらをチェックしてみたいと思います。
◆RoomPaのサービス概要とメリット
ぼくは、基本的には不動産の世界もITやAIが広く活用され、より良い取引が増えたり利便性が高まったりするといいなと思ってます。
ただ、実際には不動産テックは的外れなものが多く、そのほとんどが成果を出せないまま撤退したり低空飛行を続けている訳です。
それを解説した記事は多くの方に読まれ、反響をいただきました。
この新サービス「RoomPa」は、「ルムパ」と呼ぶらしいのですが、ホームページを拝見すると以下のようなサービスであることが分かります。
1.引っ越し予定の入居者が、住まいをルムパに登録する
2.興味を持って問い合わせてきた人の質問などに対応する
3.入居が決まった場合、家賃の25%が紹介料としてもらえる
家賃10万円の部屋だと、25000円が紹介料としてもらえる訳ですね。
部屋探しをする人のメリットとして、下記のような記載がありました。
(クリックで当該ページへ)
・今の入居者さんが写真撮影や計測をしてくれるので、内見の必要がない
・いわゆる「部屋の口コミ機能」がある
・おとり物件がない
ということですが、これを知ったときのぼくの反応は残念ながら「こんなニーズあるの?」というものでした。
◆疑問が湧き出る
個人的にはこのルムパ。突っ込みどころが満載のサービスだと思いますので、いくつか挙げてみたいと思います。
まず、このホームページのどこを見ても、部屋のオーナーや管理会社さんについての記述がありません。
このような行為をオーナーや管理会社の許可なく行って良いのか。現状の家賃を入力する欄がありますが、家賃の決定権はオーナーにあるのに勝手に決めて良いのか。
ルムパが指定する会社で仲介をする仕組み(だから紹介料がもらえる)ですが、既存の管理会社と貸主との間で専任媒介契約があった場合どうなるのか・・など、数々の疑問が湧き出てきます。
いまは正式リリース前ということで部屋を探す機能は利用できないので、アカウントを作って部屋を登録してみようと試みましたが・・
公開される住所こそ市町村までですが、最寄り駅や部屋のスペックなどは細かく入力しないと登録できない仕組みです。
若い女性が部屋を登録し、家具や内装の感じから居住者の属性を読み取った人が、問い合わせのふりをして細かいこと(住所など)を聞き出し、ストーキング行為に出るような可能性は十分あり得ます。
また、普通の人は物件が特定できないような部屋に入居の申込をするようなことはしませんので、運営規約で「部屋の特定に関する質問」が禁止されていたとすれば、それこそ誰も成約しないままサービスが消えることになるでしょう。
◆登録が面倒で、心理的抵抗も大きい
部屋の登録作業は、かなり面倒くさいです。
細かい数字やスペックを何画面にも渡って入力していきますが、普通はこの写真の登録のところで挫折するのではないかと思います。
こういう作業を毎日やっている賃貸仲介会社のスタッフさん、いつもありがとうございます。
そして作業的な面倒くささもさることながら、居住中のトイレやお風呂の写真をネットに載せるって、普通の感覚だと相当な抵抗がありますよね。
せいぜい数万円の手数料を得るために、ここまでの作業を完遂できる人はかなり少ないのではないかと思います。
◆まとめ。なかなか厳しいかも。
以前のツイートを再掲載します。
◆いわゆる「不動産テック」が次々と失敗する理由
・市場や取引の透明性が大して望まれていない
・良い不動産は売るも貸すも今のままで困らない
・業界の商慣習をバカにしている
・事業モデルが性善説に基づき過ぎ
・お金がない側の味方をしている真逆の取組で一気に浸透したサービスもあります。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) October 8, 2020
このルムパ。
サイトで強調されているほど「おとり物件」というのは存在しませんし、最も大きな権限を持っている貸主を放置してますし、「バカにする」とまではいきませんが、借りたり買ったりする不動産の現物を確認するという、めちゃくちゃコアな商慣習を無視しています。
もらえるかも分からない数千~数万円のために、面倒な作業とプライバシーを危険に晒すことを受け容れる人がいないと成立しないし、「そのレベルのお金を頑張って得ようとする側」を向いたサービスということで、ツイートで挙げている「上手くいかない理由」をかなり網羅しているのではないでしょうか。
◆保有物件でルムパを利用されたら・・?
自分の所有物件で入居者さんがルムパを利用し、次の入居者を決めてくれた場合の対応をどうするか考えてみました。
まず、一棟もの物件の場合は全て管理会社さんに専任媒介で仲介をしてもらっているので、そこを通してもらうことになります。賃貸借契約書は統一しており、それを使わない契約は認めません。
お金のやりとりはケースバイケースです。広告料を多めに出しているので、管理会社さんの善意でルムパ指定の業者さんにも手数料を入れることはできるかもしれません。
ただし、退去前に次の入居が決まっているので、どうしても原状回復などのクオリティは下がるでしょう。バリューアップを予定していたとしても、実施は「その次」になります。
自主管理している区分マンションの場合。
原状回復なしのまま住んでくれるなら考えますが、なかなかそうはいかないでしょう。難しい場合は、賃貸の申込は却下して物件を売却します。
大家さんが常にきちんと原状回復して、同じ家賃で再賃貸するという前提は、ちょっと性善説に寄りすぎているような気がします。