軽薄ワードの背景と解説(前編)
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解釈次第でどうとでも取れ、苦しいながらもウソにはならないレベルで物件のプラス要素を見つけて伝える。するとどういう訳か、どこの不動産会社も似たようなパターンになってしまう。
これが不動産業界の「軽薄ワード」です。
◆根拠がないのに、売り物件を良さげに見せるために使われる「軽薄ワード」7選
1. 資産価値大!
2. 積算○○%!
3. フルローン可能性あり!
4. 大手ハウスメーカー施工!
5. 完全非公開物件!
6. 人気エリア!
7. 大規模修繕済み!— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) May 9, 2023
今日は本編ということで、各種の軽薄ワードに隠された意味について考えていきたいと思います。
◆そもそも「資産価値」とは?
明確な定義なしで使われている単語としてはトップクラスである「資産価値」という言葉。
ぼくの考えでは「価値が落ちない一等地にある流動性が高い物件」が資産価値が高いということだと思いますが、現場ではそうじゃないニュアンスでも使われます。
こんな物件に使われることが多いですね。
・世田谷とか杉並、山手(横浜)や箕面(大阪)などにある
・土地がそこそこ広い
・耐用年数切れの木造アパート
それなりに高級な住宅街にある、ペンシルビル系じゃない物件に対して使われることが多い「資産価値」というワード。耐用年数が切れていれば、確かにそれ以上価格が下がる要素が減ります。
上記のような物件はいってみれば「利回りが低い」ことの裏返しです。
本来の意味は違うはずですが、軽薄ワード業界においては資産価値と利回りは反比例するので、お知らせメールに「資産価値大!」と書かれていたら、築29年の木造アパート(利回り6%)だと受け取って良いです。
◆足りなくてもアピールする
積算は元々は「積算>売値」とか「積算超過!」という言い回しでお薦めされることがほとんどでしたが、最近は売値に全然足りてなくてもアピールワードに使われたりします。
積算という言葉が入っていれば、それだけで反響率が高まるのでしょう。
だからこそ、こんなメールが作られたりします。
積算67%ということで、売値に3800万円くらい足りてないです。
そんなんでアピールすんなよと思いますが、同様のメールが会社問わずたくさんあるということは、実際に反応が取れているはずなんです。どういう人達が反応するんだとは思いますが。
◆数学的な解釈で「可能性」とは
「フルローン可能性あり」も極めて軽薄な使われ方をしていますね。
そりゃどんな物件だって、とてつもない純資産をお持ちの人ならフルローンを出す金融機関はあるでしょうし、さらに言えばどんな人が買うどんな物件だってフルローンの「可能性」はあるでしょう。
ゼロ%であることを証明できないのであれば「可能性はある」のです。あなたも私も、無限の可能性を秘めているのです。
なので、アピールすることがなければ「ゼロであることを証明できない」という理由で「フルローン可能性あり」と書けばウソではありません。
◆大手メーカー施工は構造的な低利回り
大手ハウスメーカー施工というのは、これはストレートに「利回りが低い」ことを意味します。
「建築費が(新築当時は)掛かっているからね・・利回りが低いのは建築費とは関係ないんだけど、何しろ大手って言えば高く売れそうだし。あと、建物が劣化しづらいイメージありますでしょ。それにアフターサービスもちゃんとしてる感じがするじゃない。まぁ大手でもそうじゃなくても、保証期間は新築から10年って決まっているから関係ないんだけどね(築28年)」
・・みたいな悪意があるかは分かりませんが、大手ハウスメーカー(ここではヘーベル、あとは積水とか大和ハウスなど)で建築されているアパートの利回りが低いのには、ちゃんと理由があります。
いくつか挙げてみると・・・
・地主さんが建築していることが多く、売れなくても困らないから価格が強気
・ゆったりと建築された広めの間取りで収益性が低い
・立地が微妙なので家賃がだいぶ下がっている
・そもそも売主さんが地主なので、収益還元の概念がない
といった背景事情があるからなんですね。構造的に利回りが出にくい。
ムリ目な値段で媒介を受けた会社が、唯一のアピールポイントである「大手」を使うのは必然。これ以外にお薦めしようがないのです。
なので高利回り物件狙いの投資家さんは「大手ハウスメーカー」という文字のみでスルーしても大丈夫。そのくらい利回り低いです。
・・ということで、なんか意外と長くなっちゃいますね。。後半は次回に続きます。