サラリーマン投資家と市場原理
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市場原理というのは本当によくできたシステムです。
今日は、市場原理と比較しながら今の「サラリーマン向けの不動産投資市況」についてお話をしようと思います。
◆価格が上がってライバルが増えるサイクル
ある商品のニーズがたくさんあるのに、それを提供できる人や会社が少なく需要が満たされない場合、まず最初に起こる現象は「商品の価格が上がる」です。
高くても買う人が一定数いて、その一定数くらいまでしか商品が製造できないのであれば、提供側は最大利益をとるために価格を上げる訳です。
提供者は激しく儲かります。こういのを「ブルーオーシャン」と言ったりします。
商品の価格が上がって大きな利益が取れるとなると、オイシイ市場だと気付いたライバル達が市場に参入してきます。
そして「もっと安くしてライバルに勝とう」と考える人が増えたり、また「高い値段でも買う人」以上の商品が提供されることで、商品の価格は下がっていきます。
価格競争が激化すると、その水準では利益を出せないような会社は淘汰されていき、過剰な安売り競争は適正化されていきます。
ライバルや商品の提供数が増えたり減ったりすることで、商品の価格も上がったり下がったりしつつ、妥当な水準で安定していきます。
◆不動産の価格が上がるとどうなるか
今度は、上記の例を不動産にあてはめてみましょう。
銀行の評価が出て、いわゆるフルローンで購入できる物件があるとします。
耐用年数以内の「正統派な返済期間」でも十分なキャッシュフローが出せるとなると、もうこれは錬金術のようなものですから、買いたい人が殺到します。
買いたい人は殺到するけど、フルローン評価の出る物件は限られていますので、その後に売られる物件はだんだん価格が上がっていきます。先ほどの商品の例と同じですね。
価格が上がるということは、同じような「フルローン&耐用年数以内の返済」をすると返済比率が上がってキャッシュフローが出なくなります。
そうなると、不動産を買いたいという人は減っていきますが、これも商品の例と同じように高くても買う人は一定数残ります。
◆何かが犠牲になる(だから妥協が必要)
利回りが下がった結果、「フルローン」「耐用年数以内の返済」「キャッシュフロー」のどれかを犠牲にしなければ投資が成立しません。
自己資金をもっと多めに出す人もいるでしょうし、自己資金の乏しい人は耐用年数を超えて返済を続けたり、または返済年数は妥協しないで少ないキャッシュフローに耐えることになります。
以前の記事で説明したように、自己資金をどれだけ出すかやキャッシュフローの水準は、ある程度の資産背景がある投資家さんであれば最重要の指標ではなくなります。
なので、そういった人は自己資金を多めに出してキャッシュフローを確保したり、その逆で家賃のほとんどを元金返済に回したりといった選択ができます。
しかし、例えばこれが物件をひとつも持っていないような人だと、選択肢が限られます。
フルローンじゃないとそもそも買えないし、キャッシュフローが乏しい投資は破綻に直結してしまうので、この2つは妥協できません。
※参考記事:初期段階の不動産投資(キャッシュ優先とその代償)
だから、3つの要素のうち妥協できるのが「耐用年数」のみという結果になります。
耐用年数を超えた融資を受けると、
・残債が減るのが遅くなるので、物件価値を維持していないと含み損になる。
・今後の融資においてマイナスの評価をされることがある。
という2つのデメリットがあります。
このデメリットを受け容れられない人は、不動産を買うことができません。こうして自己資金の乏しい投資家(含む予備軍)の一部は市場から撤退していきます。
◆もう錬金術は難しいかも・・
撤退する投資家さんがどんどん増えて「高くても買う人」が売り物件の供給数より少なくなると、今度は不動産の価格が下がってくるようになります。
そうすると「あ、今はまたフルローン&耐用年数以内でもやれるんだ」と気付く人が増えて価格が上がって・・・と、以下繰り返しです。
不動産の場合は、これに銀行の融資姿勢が絡んでもう少し複雑なモデルになっている訳ですが、いまは不動産投資のメリットがしっかりと浸透してきていますので、おそらくは「自己資金をある程度出せる」人だけでも供給分の購入は満たせてしまうでしょう。
つまり「フルローン&耐用年数以内での融資」でがっつりとしたキャッシュフローが出るような価格(利回り)で不動産が売られることは今後もない、ということです。
もちろん、不動産は個別性が高いですから「値付け間違い」「管理運営上の理由」「売り急ぎ」などの理由で安く売られることはあります。
しかし、そういうレアな物件を資金や経験の乏しい人が買うのは更に難しい訳で、そうなると何かの要素を妥協するか、自己資金を貯めてフルローンを諦めるしかないということになります。
この現実をしっかり理解しないと、永久に買えません。
ただ、数少ない例外はありますので、過去の記事を読んで探ってみてみてくださいね。