滞納保証会社の微妙な立ち位置
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滞納保証会社は、これから倒産や廃業、強引な取り立てなどで必ず問題になり、その後は法改正などで正常化されていくと思われます。
滞納保証制度の問題点
・保証会社の倒産廃業についての法整備がない
・リスクに応じた保証料率になっていない
・保証会社の権限が不明瞭
・その結果としての強引な請求や威迫
・将来に備えた積立ができない(利益は全額課税)これから保証会社の倒産や廃業が続けば、制度改定されていくと思います。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) 2020年5月5日
問題点は以前のブログでも記事にしていますが、今回はこちらのツイートのうち前回書き切れなかった「保証会社の権限」と「その結果としての強引な請求や威迫」について説明します。
◆滞納があった場合の法的な位置づけ
入居者さんが何らかの理由で家賃の支払いを怠った場合、大家さんの請求に基づいて保証会社が貸主に家賃相当額を立て替え払いします。(契約形態によっては、保証会社が普段の家賃を直接受領し、貸主に送金している場合もあります)
この立て替え払いを法的には「代位弁済」といいます。
代位弁済を行うことにより、保証会社は滞納家賃を大家さんに代わって入居者に請求する権利を得ます。この権利を「求償権」といいます。
◆ここで発生する中途半端な立場
保証会社の役割はシンプルで、「代位弁済」とそれによる「求償権の取得」だけです。もちろん、保証会社の損失を減らすために、求償権を行使して入居者から家賃を回収しようと努力します。
しかし、貸主としての立場そのものを継承した訳ではありません。
悪質な滞納者へのもっとも効果的な手段である「物件の明け渡しを迫る」ことについては、法的にはやっちゃいけない訳です。この中途半端な立場によって、保証会社の様々な問題が生まれます。
◆問題点その① 強引な回収
立て替えた家賃を回収しないと、保証会社の経営は立ち行きません。しかし、上述のように保証会社は法的に立ち退きを迫ることができないので、
「◯日までにお支払い頂けない場合は、賃貸借契約を解除させていただきます」
というプレッシャーを掛けられません。
入居者が家賃を払う唯一の理由は「払わないと住めなくなるから」なので、退去させる権限を持たない人がが紳士的に督促しても、効果が薄いのは容易に想像できます。
追い出せないからこそ、入居者が「脅された」と感じるような、迫力のある回収活動につながるのです。
ちなみに、消費者金融などは貸金業法によって取り立ての基準が決められていますが、保証会社については特別な法律による規制はありません。
◆問題点その② 退去を誘導してしまう
その①と矛盾するようですが、実際には保証会社の回収担当社員から退去を迫られたという人は多いようです。
上述の通り保証会社に法律的な権限はないのですが、そういったことを知らない入居者も多いためか、良心や恐怖心から自主的に退去してしまう人もいます。
保証会社の社員さんも「ギリギリの線」を攻めている訳です。
入居者が退去しても、保証会社には何のデメリットもありません。火災保険のように未経過期間に応じて解約返戻金が発生することもないので、変な話ですが保証会社にとっては「契約してすぐに解約」されるのが収益的にベストだったりします。
・遅れがちであるが、長期の滞納にはならない
・一時的に支払いが滞ったが、月の家賃に上乗せして長期的に完済する
・引っ越しするのもお金が掛かるので、遅れながらもなんとか払う
このような入居者さんは、長く住んでくれる「良いお客さん」だったりする訳ですが、保証会社が(大家さんの意図に反して)あっさり退去させてしまうケースもあります。
◆問題の解決は難しい
これらの問題を解決するためにどうしたらいいか・・・という話は、そう簡単ではありません。
・保証会社による退去誘導行為を合法化する
・逆に法規制を強化し、強引な回収を一切させないようにする
このどちらも、今のままでは実現が難しいです。
保証会社への規制は今後強まるはずですが、貸金業のように厳しく取り締まると会社自体が運営できなくなってしまうのです。
特に、滞納保証の契約書や保証会社の決算を調べていくと、この制度自体が構造的に矛盾を抱えていることが分かるのですが、これについては別の機会に説明します。
いまの段階で大家さんにできることは、
・ちゃんとした審査を行っている財務内容の良い会社を選ぶ
・滞納があっても、保証会社に丸投げしない
この2点に尽きると思います。