資産計上で償還年数を短くする具体例
■不動産投資の羅針盤「プレミア投資部」はこちら
■大家さんのための無料Web情報誌「満室経営新聞PLUS」はこちら
少し前に、債務償還年数についての記事を書きました。
紹介ツイートで自画自賛もしています。分かりやすく書いたつもりでした。
今日のブログは「債務償還年数」について解説しました!
どういう指標なのか、計算方法、融資を安定して受けるための基準値や大家さんが数値を良くするためにできるテクニックなど。手前味噌ですが、めちゃくちゃ分かりやすいです。https://t.co/f8GYA20rdM
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) October 22, 2020
しかし、後半のところが分かりにくいという指摘を受けてしまいましたので、今日はその補足説明(具体例)をしようと思います。
◆大家のAさん登場
難しいと言われたのは、記事の後半の「経費と償却資産」のところです。
確かにそうなんですよね。。実はあそこの部分は具体的な数字を使って説明しようと思っていたのですが、そこまでやると記事が長すぎてしまい、かえって分かりづらくなりそうでした。
最初から前後編に分ければ良かったですよね。
記事を引用してみましょう。この部分です。
では、これを説明するために一人の大家さんを連れてきます。
↓
大家のAさん。
保有している不動産は簿価で1億円。土地と建物はそれぞれ5千万円ずつ。
そのほか借入金8千万円と現金2千万円を持っていることにします。
従って、現在の純資産は4千万円。
自己資本比率は4千万円÷1.2億円(総資産である不動産+現金)で33%。
今年は賃貸経営で200万円の減価償却費を計上した後の経常利益が400万円になる予定ですが、期初に実施した300万円の修繕をどう扱うかを迷っています。
◆納税が嫌いで経費にした場合
こういった支出について、税法上は以下のように決められています。
※国税庁のホームページより。クリックで移動。
建物の大規模修繕は、赤枠囲みのところに記載されている「通常の維持管理や修理のために」の部分は解釈が分かれるところです。
節税について書かれた本には「大規模修繕を経費にするには」というようなテーマで、例えば「修繕に合わせて設備を足すな」とか「工事の見積書に”補修工事”と記載しましょう」なんていうノウハウが載っていたりします。
なので、納税が嫌いな大家さんはノウハウ通りに300万円を修繕費として損金処理をすることになります。
そうした場合のAさんの決算状況は下記のようになります。
今期の経常利益は400万円(当初)に修繕費300万円を計上して100万円。
法人税をぐっと圧縮することができました。
現金は1500万円。土地建物は合計1億円と変わらず。
純資産は500万円減って、3500万円になりました。
自己資本比率は若干悪化して、30.4%。
債務償還年数を計算してみると、
・実質債務「8千万円-現預金の1500万円=6500万円」
・利益+減価償却「100万円+200万円(変わらず)=300万円」
6500万円÷300万円=21.6年。あまり良い数値ではありません。
◆資産計上して納税した場合
では、300万円の修繕費を償却資産にした場合を計算してみます。
300万円が建物の価値を上げたことになるので、不動産資産は1億300万円に増加しました。貸借対照表の上では「現預金」が「建物」に移動しただけです。
従って、純資産の額も自己資本比率も変動なし。
資産計上した300万円は、通常は建物の耐用年数にそって減価償却していきます。仮に単年度の償却金額が50万円だとすると、今期の経常利益が250万円、減価償却費が350万円になるという計算です。
債務償還年数を計算してみると
・実質債務「8千万円-現預金の1500万円=6500万円」
・利益+減価償却「250万円+250万円=500万円」
6500万円÷500万円=13年ということで一転、かなり優秀な数値になりました。
利益の金額が増えたことで多くの税金を支払うことにはなりましたが、融資を受けられる確率はぐっと上がっています。
今期に損金計上できなかった分は、翌年度以降も減価償却をしていける訳ですから、長い目で見ればトータルの納税額はほとんど変わりません。
◆決算書理解への道
決算書というのは難しく感じることもありますが、専門的な本を読んだりしても、なかなか理解が進みません。
マスターするための早道は、自分の法人の決算を隅々までチェックして理解することです。分からないところがあれば、どんどん税理士さんに聞きましょう。
決算書(特に貸借対照表)という仕組みは、いったいどんな天才が考えたんだろうってくらいエレガントにできていると思います。
決算書を見に来る銀行員さんに決算の意図や見通しをしっかりと説明できるようになるだけで、融資の姿勢はかなり変わってくるはずですので、分からないまま済ますという選択肢はありません。