「買取り再販業者の味方」に注意
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ファミリー区分マンションは、一般的に「分譲マンション」と呼ばれますが、ぼくのように不動産投資として買ったり売ったりしている人は多くなく、ほとんどの場合で買い手は実需、つまりマイホームとして購入しています。
一方、売り手はどういう人になるかというと「住み替え」と「買い取り再販業者」がほとんどです。
ぼくも、広い意味では後者ですが、買って売ってを延々と繰り返している業者さんとはちょっと違いますね。
分譲マンションの再販業者は購入した部屋を一度も貸すことなく、リフォームを施して高く売ることだけをビジネスにしています。
従って、ぼくのような賃貸業主体の会社とは扱う件数が桁違いです。
◆一般的には売り手が有利・・だけど
一般的に不動産の売買仲介をする会社は、どちらかと言えば売主さん寄りの立ち位置になることが多いです。買い手の代わりはいますが、売り物件の代わりはないからです。
しかし、上記の買い取り再販業者が買い手である場合は例外です。
再販業者は圧倒的に多くの取引を行っているため、仲介会社にとっては上客です。しかも「良い(=安い)物件を回してくれたお礼に、再販時の仲介を同じところに(今度は買い側として)頼む」という慣例もあります。
これを業界用語で「専任返し」と言いますが、再販業者を買い手として売買を成立させた時点で、もう1件の媒介契約もゲットできるということで、そりゃあ市場原理として再販業者の味方をするよね・・という話です。
もしかしたら、仲介担当者へのキックバック的なものだってあるかもしれません。
例えば「今の価格では売れないので、〇〇万円下げましょう」と言われた直後に、再販業者から買付が入る・・みたいなのは、「もっと高く売れる」という証明をしているにも等しいですよね。
こういった再販業者の優遇は、それなりに知識や経験がある自分でも「これは露骨すぎないか」と感じることが多いです。
◆実際にあった「業者寄り」の事例
これらは、自宅を売却した人が実際に体験した、露骨な「再販業者の優遇」です。
1.内装をスケルトンにしようと提案された。
→ 再販業者のリフォーム費用を削減するための提案。実施した時点で、普通の実需客への売却が絶たれることになります。リフォーム好きの一般人が買う可能性もありますが、本当にスケルトンの方が儲かるなら、業者が売る部屋もスケルトンのままのはずです。
2.売買契約書の印紙を100%売主負担にさせられた。
→ 印紙代を節約するために、契約書は1部のみで「買主が原本、売主がコピー」とし、料金を折半することはよくあります。しかし、契約書の特約条項に「売主が原本、だから印紙代は100%負担ね」と書かれたものを見たことがあります。
「通ればラッキー」の露骨な業者優遇です。
3.所有権移転登記の費用を、売主に請求した。
→ 不動産を売る際に必要な登記費用は、「抵当権の抹消」のみです。ローンが完済されていれば登記費用は掛かりません。そしてもちろん、所有権の移転は普通の分譲マンションでも数十万円は掛かります。
いけしゃあしゃあと見積書に提示され、「これはおかしいですよね」と主張してはじめて買主負担ということになったという極めて悪質な事例。
◆公平じゃない、と分かって挑む
売買仲介会社が、買い手と売り手の両方を仲介することは、業界用語で「両手取引」といいますが、取引の公平性に支障を来すとして従前から問題だとされています。
例えば、民事の裁判でひとりの弁護士が原告と被告の両方の依頼を受けたら、大変なことになりますよね。フェアな裁判など、到底望めません。
しかし、不動産仲介では似たようなことが許されており、であれば「完全に公平な不動産取引」よりは、どちらかに偏ったものになると考えるのが自然でしょう。
その際に、一見の小口客であるマイホームの売り手はもちろん、小規模な不動産投資家が優遇することは考えにくく、であればそれなりに知識武装をして自己防衛をするしかありません。