一括紹介サービスが、業界の悪習を変える?
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区分マンション投資をしていると大切なのが、物件の選定や融資よりも「上手に売却すること」です。
リフォームをして実需(マイホームとして購入する人)向けに売る訳ですが、売買仲介会社と再販業者の関係は想像以上に強固であり、これまで何度も残念な思いをしてきました。
悪い言葉でいえば「癒着」とみなして良いくらいの関係性については、少し前にブログ記事にもしています。
再販業者の取引数が圧倒的に多いため、こういう不平等な構造を変えるのは難しい。一般の顧客・投資家さんはこういう背景を理解した上で、売却に臨みましょう・・というような内容でした。
◆あの会社が、まさかの新サービス
しかし、この不平等な構造が変わっていくかもしれません。こちらのツイートをご覧下さい。
https://twitter.com/gkfudousan/status/1411234320711241728
仲介大手の住友不動産販売が、再販業者向けに出した案内です。
どういうことかというと
・宅建業者向けへの売却案件は、専門の部署がとりまとめて案内する。
・つまり、一般店舗や営業マンからの直紹介は今後なくなる。
・案件は複数の業者に一斉に紹介され、個別の独占情報は得られなくなる。
ということで、これは再販業者にとっても住友不動産販売の社員さんにとっても、かなり大きな変革なのは間違いありません。
◆再販業者に物件が売られる理由
なぜ売り物件が再販業者に流れていくかという理由ですが、ひとつは「一般の顧客が購入するにはハードルが高い」というのがあります。
リフォームが実施されていなかったり、残置物がたくさんあったり、権利関係でもめていたりなど、「すぐには適正な利用ができない」という不動産は意外とたくさんあります。
こういうのを再販業者が購入して問題を解決し、一般向けに利益を乗せて販売することは全く問題ないと思います。まさにプロの手腕。
しかし、そうじゃない理由で再販業者に売られる不動産もたくさんあります。
なぜかというと「業者に売却した方が、仲介会社や営業マンにメリットがあるから」に他なりません。
メリットは前の記事でも説明した「専任返し(業者が再販する際に、今度は売主側として専任媒介を依頼すること」が主なものですが、営業マンが業者から接待を受けたり、キックバック的な謝礼をもらったりすることもあるでしょう。
「なるべく高く売りたい」という一般売主の利益を損なう重大な背信行為なのですが、今日も昨日も同じような取引は全国で行われています。
一斉紹介サービスは、こういう癒着を一掃するかもしれないのです。
◆住友不動産販売のイメージ(信じがたい)
上述した住友不動産販売の取り組みは、業界の悪い慣習を改善していくものであり、高く評価できると思います。
同社は、これまでどちらかというと「仕事ぶりがエグい」イメージがありました。
レインズを見た他業者が問い合わせをしても、「もう買付入ってます」という嘘をついて両手取引に固執する、いわゆる「囲い込み」が会社のスタンダードになっているなど、売主の利益を阻害する行為を率先してやっていた歴史があります。
何か裏があるのでは・・と勘ぐりたくもなりますが、制度が正しく運用されるのであれば、一般消費者はもちろん自分のようなファミリー区分をやっている投資家にとっても、大きなメリットになると思われます。
◆競争原理が働くことで大きく変わる
しかも、上記の案内を見る限り、売却案件は複数の宅建業者に一斉に紹介されるようです。
そうなると、業者間での競争原理が働きます。仕入れ案件が不足している業者としては「出せるギリギリ上限であっても何とか購入したい」と考えることもあるでしょう。
エンド向け価格を上回ることはありませんが、意外と高く売れることは十分に考えられる話です。「多少安くなっても早く売りたい」とか、「ローンが通るか分からない買い手のために時間を無駄にしたくない」というニーズは確実にあるからです。
また、ぼくのような業態の場合、何百万円というリフォーム費用を先払いした上に、売れるかどうか分からないまま月日を過ごすよりは、それなりの価格で買い取ってもらうことで、利益を確定させられるというメリットがあります。
業者さんならリフォームも安く確実にできるでしょうし、売却の値付けや営業活動も一般の大家さんより優れているはずです。
仲介会社と業者の癒着によって、不当に低い価格で買い取られるのがダメだというだけで、競争原理の中での最高値で売れるのであれば、自分で修繕やエンド向け売却活動をするよりもトータルで利益を出せる可能性だってあると思います。
このステキな制度が残念な運用結果にならないよう、期待しております。