保険料が上がる根本的な原因
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今日から10月。火災保険も本日始期分から改定されます。
前回の記事では、保険料の値上がりは請求マインドの高まりや日本の気候変動によるものが大きく、不正請求は大きな原因ではないだろうという話をしました。
でも今日はまず、これらの「不正請求っぽいもの」についての考察と、保険料が維持できなくなっている根本的な原因について考えてみます。
◆保険会社の「落ち度」(仕組みが悪い)
火災保険の申請サポート業者の登場によって、損保会社に「たかる」ようなハイエナビジネスが隆盛を極めていますね。
これまで特に「保険金を請求しよう」と考えていなかったような人を焚き付ける手法は、消費者金融業者に向けた過払い返還請求のモデルとかなり似ています。
しかし、申請代行にしろ一部の不動産投資家が実践している「ボロ物件を買って台風や大雨を待つ」というクソ手法も、基本的には保険会社が「正当な請求である」と認めて保険金を支払っている訳です。
過払いというのは、利息制限法で決められている金利水準を超えて(しかし「出資法」での規制は守って)お金を貸したという、消費者金融側の落ち度があります。(それに納得して借りた側の方が悪いと思いますが)
同じように保険会社にも落ち度があるというのが、ぼくの考えです。
◆リスクと保険料は比例すべき
具体的に「落ち度」というのは、以下のようなものです。
1.リスクに見合った保険料体系になっていない
2.保険会社の引受基準が緩すぎる
3.「調査するより払ってしまおう」という査定ルールと世間の風潮
4.再調達価格での契約に制限がない
今回は1と2を解説していきますが、まず「リスクに見合った保険料体系」について。
下記の2枚の写真をご覧下さい。
ふたつの家が同じ東京都区内にあったとして、大きな台風が通過した際に被害が発生する確率や被害額には、どのくらいの差が生じると思いますか?
普通の感覚をお持ちの方なら、その差は5倍や10倍ではないだろうことは分かると思います。
しかし、築年数による保険料差が大きくなった「改訂後」の保険料でも、両者の差は2.5倍程度でしかありません。
※東京海上日動での試算(東京都H構造、保険金額1千万円の戸建賃貸・入居中)
新築住宅 14,410円
築47年以降の住宅 35,660円
自動車保険の場合「①10年以上無事故の35歳以上ゴールド免許保有者」と「②免許取り立てで事故を2回起こした18歳」とでは、同じクルマに乗っていても10倍以上の保険料差があります。
後者はほとんど、保険として成立しないくらいの保険料水準になりますが、上記のボロ戸建だって同じレベルで良いと思います。
こんな廃墟に火災保険を掛けるなんて「万一の備え」でも何でもありません。
◆ヤバい契約を引き受けるな
そして、あまり知られていないことではありますが、損害保険でも保険会社は契約の引受を断ることができるし、多くの種目でそういう運用がされています。
自動車保険の運転者②は、実際の現場では「事故多発者」として営業担当に「契約の更新を断るように」という指示が来ます。(「引受を謝絶せよ」という言い方をします。そうした場合の謝絶率もカウントされていて成績の一部となります)
事故多発者の自動車保険、フェラーリの車両保険、美術品や精密機械の運送保険、警備が甘い宝石店の盗難保険など、保険会社は「相手を見て契約を断る」ことができます。
でも住宅の火災保険は公益性の観点から、申し込めばほぼ必ず加入ができるようになっており、それが保険金支払が増えまくる要因。
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) September 28, 2022
保険料水準がリスクと比例していないことに加えて、ヤバそうな契約を断らない運営も支払が高騰する大きな理由です。
保険料に見合わない(ツイートの事例のような)契約は断らないといけません。
壊れそうなところを事前に修繕したり、ボロ家を改築したりしている善良な契約者さんの保険料を、不良契約者が搾取することに繋がるからです。
無事故等級制度や年齢による区別のない火災保険で、どうやって「不良契約かどうか」を判別していくかというと、一番良いのは「代理店さんが現地・現物を見る」ことです。
ですが、これだと代理店さんに支払う手数料で手間賃がまかなえない可能性も高いので、「保険申込時に外観写真を添付する」みたいな形でも良いでしょう。
異なる方向から何枚か撮影するのを義務化し、保険金請求時にはその写真と現在の外観がかけ離れていないか(契約時の写真を不正に加工などしていないか)を確認すれば、明らかにヤバい物件の保険を引き受けるリスクは減らせます。
廃墟みたいなボロ家でも火災保険は加入できますからね。保険料が上がり続けるのは、制度が異常だから。 pic.twitter.com/C6DdnQ47lq
— 投資家けーちゃん (@toushikakeichan) September 29, 2022
・・・と、保険の話はどうしても長くなってしまいますね。
続きの話もありますが、少し間を開けてから書こうと思います。