滞納と食い逃げの法的な違い
2011年5月20日 07:24
裁判の話になるとブログが盛り上がるのは、
2004年に、初めて滞納ネタを書いて以来ずっと変わりません。
ブログのコメントや、頂くメールを読んでも、
滞納者を擁護する意見は皆無。
多くの大家さんが、滞納問題に悩み、怒ってるんだと思います。
ところで、ぼくも含めて、滞納のことを食い逃げと比較して、
大家さんは不利すぎる・・・という人がいます。
「無銭飲食は捕まるのに、なんで滞納は違うんだ!」
「長期の滞納は、食い逃げの客を再来店させるようなものだ!」
みたいな感じですね。
しかし、厳密にいうと、食い逃げと滞納は全然違います。
今日は少しアカデミックに、
法律論も含めて説明しようと思います。
まず、なぜ「食い逃げ」をすると捕まってしまうかというと、
刑法上の「詐欺」に該当するからです。
ぜは、「詐欺」の定義はというと、刑法第246条で、
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
と、規定されています。
要するに、「人を欺いて」=「騙して」いることが要件であって、
・最初から払う気がないのに注文しました。
・引き続き払う気がないのに、全部食べちゃいました。
というのが、詐欺に該当する「無銭飲食」になります。
「払うつもりだったのに、財布を忘れてしまいました」
という場合は、詐欺じゃないから逮捕されません。
一方、滞納はというと、普段の商取引と同じで、
「代金(=家賃)を支払うつもりでサービスの提供を受けたのに、
経済的な理由で、支払えなくなってしまいました」
というのが実態です。
資金繰りが悪化して会社が倒産しても、
社長が、警察に捕まってしまうことがないのと同じで、
入居者が逮捕されることは、ありません。
では、入居者がギャンブルや高利貸しに手を出し、
まともに働きもせず、生活保護までも酒やタバコで散在する、
本当にどうしようもないクズだったら、どうでしょう?
こういう入居者であっても、
モラル上の問題はありますが、罪には問われません。
豪華絢爛な社長室に鎮座し、
ろくに働かないで、会社の金でゴルフ&旅行三昧した挙げ句、
あっさり会社を倒産させた、超ダメ社長であっても、
逮捕はされないのと同じです。
ですが、通常の商品やサービスの取引とは異なり、
賃貸業を営む大家さんが、滞納者に対して
圧倒的に不利な点があります。
次回につづきます。